人生と僕         

始めて会ったその時も彼のその鋭く光る眼光は、力いっぱい引かれそして放たれた矢 の如く・・・思わず射抜かれそうで僕は目を逸らしてしまいたかった・・・けれど、 その<間>もハズシテしまった可哀想な男(僕)は・・・ゆっくりと歩みながらこち らにやって来る野武士を、動く事もままならずただ待ち受けるしかなかった・・・と、 日記に書き残したくなるほど彼との出合いにはインパクトがあった。でも(と、敢て 言いたい)それよりも何も、もっと印象に残っているのは、言葉を交わすうちに見せ 始めたコロコロ玉が転がるように変わってゆく彼の豊かな表情。とりわけその笑顔だっ た。・・・忘れられない.。

人生と出会い親交を持つようになってから、もう10年が過 ぎた。自分で言うのも何だが、その頃の僕は、今は欠片さえ残っていないだろう<武 士道>みたいなものを大切にしていた。失うことを怖れず、どんな事にでも無我と言 う我で挑み、熱き心を持ちつつも孤独であった。だから人生と出会い、互いの夢を (一度や二度でなく)語り明かした夜の事を今でもよく憶えている。初めての出合い から二年が過ぎようとしていたある日、彼は、彼のその夢の中でも一番遠くに見つめ、 僕にそれを話してくれる時でも、何よりも大切に大切に、言葉を選ぶように話してい た《戦いの中に生きる・・・》その道を選ぶのだと僕に告げてきた。何時かそんな時 が来るのかもしれないと思いながらも、決して勧めようとはしなかったその<道>だっ たが、彼が口にしたからにはもう、思いとどまらせようなどという気はなかった。で も、どうして僕ごときが折角決心した男の道を思いとどまらせようなんて、そんなこ とをこれまた敢て言うならば・・・プロレスを愛する者ならお分かりでしょうけれど・ ・・彼の体格をかんがみての事だった。小粒とは言わないけれど、決して大男達の中 で有利に戦う事が出来る体格を持っているととは思えなかったから。でも、どんな時 でも人生のまん中に、目に見えない<精神>の柱を抱き立たんとしていた彼は、とう とうプロレスの世界に身を投じる事になった。 Oh〜コワ・・・である。

今日、彼のこのホームページを建ち上げるにあたって、彼か ら知らせを受けた。新崎を愛する人達がこの場所にやってくるだろうから、そんな僕 や人生の仲間の前で僕は、今まで意識しそうしてきた封印を思いきって解いてしまお うと。彼のリングネームの事。彼が戦いの世界に身を投じると決心した時、その名を つけろと彼から頼まれ、僕が彼に贈ったリングネーム<新崎人生>は、僕と彼との付 き合いの中で、彼が、彼自らが<精神>の柱となる事を背負い歩く男になるだろうと 何時も感じ続けていた僕の中から、本当にごく自然に出て来た言葉を彼に贈っただけ であると言う事。

人生よ、心に<精神>の柱を抱き歩く新崎人生よ、君は君の道を歩むのだろうけれど、 君事体もまた、<精神>なんだ、<柱>なんだ。闇に迷い、路を見失った時に僕は、 月が照らし出す君の陰影を頼りに曠野を進もう。きっとその歩みは僕を、開けた野に 導いてくれることだろうよ。僕もまた、君が戦う四角いリング・・・目に見えている 事だけで無く、何かを人と分かちあえるような、そんな舞台を創ろうと、そう思いな がら歩いて行くよ。そして会おう。ゆっくりと語り合おう。また会おう・・・何時か 何処か、戦いの無い静かなところで・・・                                                                              

 文・宇梶剛士 (俳優)