動きの魅力 
当たり前の話だが、人間は動く。これを動作という。レスラーはこの動作を魅せる商売である。しかし、この動作を完璧に自分の特徴としているレスラーは意外と少ない。その証拠として昔と比べ、レスラーの物まねがやりにくくなった。相手に伝えたくても特徴がないため伝えにくいのだ。首をかっ切るポーズなんか、多くの選手がやりすぎて誰の決めポーズかわからない。猪木はあるインタビューで言っていた。「首をかっ切るなら、本気で殺る気でいけ。」と。今のレスラーには身体表現のアピールはあっても、気持ちが伝わってこないレスラーが多いのではなかろうか。
レスラー・人生は独特のリズムで自分の特徴を表現する。ゆっくりと荘厳な入場、深々とした礼拝、コスチュームをリング中央で脱ぐさまなど、そのシーンを観るだけで「あー会場に来てよかった。」と思う。そして試合。大技意外にも魅力が満載だ。
ゴングが鳴り、相手の様子を見る。リングをゆっくりと回りながら、手甲をおもむろにあげながらゆっくりとステップする。人生ステップ(勝手に命名)である。この時の人生の動きは独特で、自らの体を一回転させるのである。相手とは完全に目線が切れるが、この時、まるで背中にも目があるが如く、グルッと一回転して再びリングを回る。この時、カクテル光線に照らされた肉体は残像を残しながら、まるでオーラのように映る。この時のスピードが実にスローなのだが、強弱のつけかたが絶妙で、相手を自分のペースへ引き込んでいく。タッグの場合は動作の際にもう一人のコーナーで待機中の相手にも無言のプレッシャーをかける。
また、コーナーポストに上がる動きも独特で、一本一本ロープを上るのではなく、ポーンと片膝をたたみ、一気に最上段に上るのである。この動きは実に軽快で、ジュニアの選手でもこう早く上がる選手はそういないだろう。それまでの動きがスローなため、特にすばやい動きは相手に驚異を与える。そしてしっかりと相手を見つめ、一気に次の技へ続く。
リングを対角線に前方回転の受け身をとり、すばやくリングに上がる。かと思えばとトップロープからのスワンダイブ。この技の強弱、緩急は最大の魅力ある。
人生はレスラーとして決して恵まれた体格とは言えないない。しかし、自己を表現し、全体の独特の雰囲気を醸し出す術を彼はアメリカ修行という言葉の通
じぬ苦行で開眼させた。そして、動きというものに『魂』を込めることも。
文・天野高雄(僧侶)